「ゴルフをみんなのスポーツへ」2015年ゴルフ新年会開催
1月21日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で、恒例の「ゴルフ新年会」が開催された。ゴルフ関連17団体を代表した冒頭の挨拶で、日本ゴルフ協会の安西孝之会長は、「今年は、ゴルフ団体全体としての基本的な戦略と戦術的な課題を改めて見直しました。本年度は3つの基本的なテーマを基に、それぞれの団体が細分化された戦術的な課題に基づいた活動の展開を行い、ゴルフの活性化を図っていきたいと思っております。皆様方におかれましても、このゴルフ活性化に向けた取り組みに是非ご協力をいただきたいと思います」 と挨拶。大同団結し、ゴルフ界を盛り上げていくことを誓った。
資料提供:(一社)日本ゴルフ用品協会JGGAニュースより
2015年ゴルフ新年会 新春特別講演
「ジュニアの才能を開花させるチャレンジ〜錦織選手の場合〜」
講演:盛田正明氏
ゴルフ関連17団体が主催した「2015年ゴルフ新年会」では、賀詞交換会に先立ち、日本テニス協会名誉会長を務める盛田正明氏が新春特別講演を行った。演題は「ジュニアの才能を開花させるチャレンジ〜錦織選手の場合〜」で、自身で私財を投じて設立した「盛田正明テニス・ファンド(以下、MMTF)」の話やこの財団から送り出されたプロテニスプレーヤーの錦織圭選手の裏話など、内容は多岐にわたる。それでは以下より、同講演内容を抜粋してお届けする。
ソニーでの47年間で得た「強い目標意識」
ソニーといえば、「MADE IN JAPAN」を世界に広め、戦後における日本の経済発展に大きく貢献した大企業である。その世界的な企業で、副社長などを歴任したのが、今回講演を行ってくれた盛田氏なのだ。
盛田氏は、昭和26年に大学を卒業後、東京通信工業(現ソニー)に入社。当時設立5年目で、社員は80名ほどの中小企業だったという。入社後直ぐに、創業者の一人である井深大氏から「厳しい目標」を与えられたという。
「日本のエレクトロニクス業界で小さな会社が生き残っていくには、『他と違う事をやらなければならない』と井深氏から言われ続けました。例えば、開発に数百万円もの費用がかかる製品を10万円で作りなさいとか、とんでもない目標を与えられた。その『厳しい目標』に日々邁進することで、働き甲斐を感じながら、突っ走ってきました」
その後ソニーは、日本初のテープレコーダー、トランジスタラジオを発売するなど、数々のヒット作を世に送り出してきた。盛田氏も会社の成長と共に、ソニー副社長、ソニー生命保険会長などを歴任。47年間、常に「厳しい目標」に対して、突き進んできた同氏は退職後、自分の目標がなくなったことに気付き、「新たな目標探し」を始めることとなる。
「いまさら自分の目標を持つより、若い人に目標を与えて頑張ってもらうことで、これを自分の目標の代わりにすればいいと考えつきました。
実は昔からテニスが好きで、ソニー時代には、IMGの創業者であるマーク・マコーマック氏とよくテニスをしました。また、彼がグランドスラムのボックス席を用意し、全豪オープン以外の3大会に毎年招待してくれたのです。そこで目にしたのは、日本人の出場選手が少なく、世界のトップで戦っていたのは女子選手が数名いた程度だった。
私はこの時の光景と井深氏の教えを思い出し“どうせやるなら自分の好きなテニスで、誰もしてないことをやろう”と思ったわけです。そして考え出したのが、“日本の優秀なジュニアを海外で養成して、世界のトップ選手にする”ということだったのです」
国際テニス選手養成学校
「IMGアカデミー」とは“海外で世界のトップに立てる選手を養成したい”という考えは、固まった。ただ、テニス業界では言わば、“素人”である盛田氏が一人ではできない。まずは、自身の思いを伝えることから始め、形にしていったという。
「旧知の間柄である吉井栄さんに相談し、日本のテニス界をリードしてきた坂井利郎さんを紹介してもらいました。さらに、坂井さんから日本代表のコーチを務めた丸山薫さんと、テニス界の多くの方々が協力を約束してくれました。また、私の親友でもあるマーク・マコーマックにもこのアイデアについて話しました。そうすると、彼が買収した米フロリダ州の国際テニス選手養成学校『IMGニック・ボロテリー・テニスアカデミー(IMGアカデミー)』を使用していいということになりましてね。私たちと一緒にそのアカデミーまで行って、ニック・ボロテリー氏に直接選手のトレーニングを頼んでくれました」
2000年より、日本で選考したジュニアをIMGアカデミーに派遣し、渡航費やアカデミーでの滞在費や遠征費、学費などを援助する。
「選考の方法は年々改善され、現在では、こちらが日本全国から集めた選手を、IMGアカデミーのヘッドコーチに選考してもらうシステムです。そこで、選ばれた選手には、IMGアカデミーに2週間行ってもらって、実際にトレーニングを受けてもらいます。選考試験に合格した選手が強化指定選手として、1年間IMGアカデミーでトレーニングを受けることができます」
合格した強化指定選手は9月初旬から、5月末までを1期目としてトレーニングを受けることができるが、年ごとに5つの達成目標を定め、5月末までに1つもクリアできないと帰国しなければならないという厳しい世界なのだ。このトレーニングを5年間継続し、プロになったのが、錦織圭選手だったという。
“第二の錦織圭”を作らないといけない
錦織圭選手がテニスを始めたのは5歳。2001年に全国小学生テニス選手権大会で優勝。2003年(中学二年生)から「MMTF」の強化指定選手として渡米し、IMGアカデミーでトレーニングに励んだという。
「ジュニア時代の錦織選手は、大舞台を前にしても、まったく緊張のそぶりを見せなかったですね。普段からひょうひょうとしていたので、私は彼のことを『テレンテレン』と名付けました。
あるジュニアグランドスラムの大会で、どの選手も緊張して自分の出番を待つ中、なぜか彼だけは『テレンテレン』とゆっくり歩いて来て、再び控室に戻っていった。試合が終わって話を聞くと、『パンツが合わなかったから履き替えてきました』と、言ったんです。こいつは、凄い選手だと思いましたよ。普通は我慢すると思いませんか? 彼は、戦ううえでどこか気に入らないところがあれば直すことはもちろん、100%勝つために完璧を求める選手なんだなと感心しました」
その後の活躍は、目覚ましいものがあり、昨年9月の全米オープンでは、決勝戦に進出するなど、日本人選手として男女通じて史上初の快挙を達成したのは、記憶に新しい。
「錦織選手は15歳からプライベートコーチを付けて、今までで7人もコーチを替えています。彼が強くなった理由は、コーチを替えるたびに、彼らのアドバイスを吸収できる能力があったから。日本では、コーチが選手を囲ってしまうような閉鎖性がありますが、IMGのコーチングは、次のステップを見据えてコーチを変更することが多いですね。これは、IMGの『コーチング力』というものであり、日本も大いに参考にする必要があると思います。
日本のテニス業界に話を戻すと、錦織選手一人に頼っている状態です。世界で活躍するのが錦織一人じゃダメ。錦織に続く選手が出てこないといけないと思います。今のフィーバーを喜んでいるのではなく、“第二の錦織圭”を作っていくことが、私たちの使命だと思っています」
会議後に開催された「2015年ゴルフ新年会」では、新春特別講演が行われ、「ジュニアの才能を開花させるチャレンジ〜錦織選手の場合〜」と題して、公益財団法人日本テニス協会名誉会長の盛田正明氏による講演会が行われた(詳細は後述)。その後の「賀詞交換会」では、日本ゴルフ協会(JGA)の安西孝之会長が17団体を代表して挨拶を行い、「今年は、ゴルフ団体全体としての基本的な戦略と戦術的な課題を改めて見直しました。本年度は3つの基本的なテーマをもとに、それぞれの団体が細分化された戦術的な課題に基づいた活動の展開を行い、ゴルフの活性化を図っていきたいと思っております。皆様方におかれましても、このゴルフ活性化に向けた取り組みに是非ご協力をいただきたいと思います」 とゴルフの活性化に向け、業界がより結束を高める年にしていくことを誓った。
資料提供:(一社)日本ゴルフ用品協会JGGAニュースより